サルファー 硫黄 Sulfur

硫黄 sulfur Bolivia
硫黄 Sulfur Bolivia

硫黄と聞くと温泉!クサイ!と連想すると思いますが、とても身近ですよね。
温泉の湯の花は、硫黄だけでなく他の成分も混じっています。

硫黄 サルファー Sulfur

熱い温泉のお湯が噴き出し、冷却されることによってそのお湯の中の成分が固まって(析出沈殿)固形化したものです。
硫黄は食品の中にも含まれ、骨・腱を作り、皮膚のお薬としても活躍しています。

  • 硬度 2.5
  • へき開 不完全
  • 条痕 白

硫黄のにおい?

さて匂いですが…
これ、ニュースでよく聞きますが硫化水素なんです。
卵の腐ったような匂いとは硫黄の匂いではなく、硫化水素の匂いだそうです。
因みに硫黄は無臭。
硫化水素は硫黄と水素の物質です。

原子番号16 元素記号 S 硫黄

硫黄は同素体を数多く持ちます。
同素体とは、同じ元素で作られている物質ですが原子の配列や結合する様式が違うため、見た目・性質などが全く異なってしまう物質の関係性を表す言葉です。
ダイヤモンドと石墨がよく例に挙げられます。
見た目も性質もお値段も全く違いますが、ダイヤモンドと石墨は同じ元素で構成された同素体です。
硫黄の同素体は30以上もあるそうで、その中で自然にみられる硫黄は以下の3種類です。

  1. 斜方硫黄 融点112.8℃ 斜方晶
  2. 単斜硫黄 融点119.6℃ 単斜晶
  3. 単斜硫黄 融点106.8℃ 針状晶

融点とは個体が液体化する温度。
95.6℃以下の温度で斜方硫黄が安定状態となり、それよりもっと高い温度になると単斜硫黄系が安定状態になります。

硫黄は熱していくと暗赤色の液体となり、それでも熱し250℃まで加熱すると、ゴム状硫黄となってびよぉーんと伸びます。
ただし、このゴム状硫黄、そのまま放置しておくと斜方硫黄となります。

ゴム状硫黄

硫黄 福岡県吾妻山産
硫黄 福岡県吾妻山産

このゴム状硫黄、ここ最近で面白い記事があります。
高校化学の教科書、一高校生が間違いを実験で証明”というもの。
ゴム状硫黄はそれまで、褐色とされ、大学入試でも”褐色”が正解とされていました。
しかし、褐色ではなく黄色だということが判明しました。
とある高校の先生がふと生徒に”以前、黄色のゴム状硫黄ができたとこがあるんだよなぁ”と話したことがきっかけで、17歳の一高校生が実験を行ないました。

着目したのはその純度。
純度99%の硫黄華では褐色、純度99.5%で綺麗な黄色のゴム状硫黄ができました。
純度のその差は0.5。
不純物の影響で褐色となっていたことが判明し、ふとしたことから真実を見つけ教科書は訂正されました。

錬金術と硫黄

硫黄 Sulfur Bolivia
硫黄 Sulfur Bolivia

硫黄を調べていくと必ずぶつかる錬金術。
錬金術とは、卑金属から貴金属を作ることを目的とした術。
また、卑金属・貴金属にかかわらず万物全ての構成要素を利用し、新たに練成しようとする果てし無きトライアル戦。
このトライアル戦の過程で、数々の化学薬品・実験道具の発見・発明がなされ現在の”化学”にもつながっています。
硫黄はこの錬金術と深い関わりを持ちます。

硫黄は黒色火薬の原料で、火薬としては最も古い歴史を持ち、中国の錬金術である錬丹術師が硫黄・硝酸・木炭を混ぜあわせたら偶然できたという話があります。

また、医者であり哲学者であり錬金術師であるパラケルスス(ルネサンス初期)は、”アラビアの三元質”というものを硫黄・水銀・塩と定義し、この3つの働きが四大元素(地水火風)を誕生させ万物が作られたと言う思想です。
ただし、この水銀・硫黄・塩というのはそのものズバリではありません。
硫黄は物質の形相を決める力で、水銀は物質の質量・塩は物質の運動を司りそれぞれが結びつき展開していくことにより物質が作られるとの意味合いだそうです。

以上のことから、昔々その昔から人間のそばにいた鉱物ということがよく解ります。

聖書と硫黄

聖書にも硫黄は登場します。

主はソドムとゴモラの上に天から、主のもとから硫黄の火を降らせ、これらの町と低地一帯を、町の全住民、地の草木もろとも滅ぼした。
ロトの妻は後ろを振り向いたので、塩の柱になった。
(創世記19章24~26節)

これは…

ロトが住み着いた街ソドムとその近くの街のゴモラはとても栄えた街でしたが、人々は神の教えを守らず、すき放題。
それを見て嘆いた神は、二人の使者を街に向かわせました。
そして街でロトと会い、ロトの家に立ち寄ることに。
すると街の人々がロトの家に押しかけ、口々に二人の使者を出せ!と騒ぎたてました。
すると使者は、”この街を罰するために(滅ぼすために)私たちは訪れた。 ロトの家族・親戚全て連絡をして逃げなさい。”と話しました。
ロトは慌てて連絡をするも誰も信じませんでした。
二人の使者は街に硫黄の火をふらせ、街を罰しました。
逃げる時は振り返らずに行きなさいと使者に言われたにもかかわらず、ロトの妻はどうしても街に何が起こっているか気になり振り返ってしまいます。
するとロトの妻は塩の柱となりました。

というお話です。
硫黄の炎色反応は綺麗な青い炎。
青い炎に包まれた街を、ロトの妻はみて、塩の柱になってしまったのですね。